レモンの枝に白いフワフワが付着して焦った話|チュウゴクアミガサハゴロモと勘違いした初期対応ミス
春先、まだ朝晩が少し冷える四月の終わり頃だった。庭のレモンの木を何気なく眺めていたら、細い枝や葉の付け根に1cmにも満たない白いフワフワした塊がいくつも付いているのに気づいた。綿埃のようにも見えるし、虫の卵のようにも見える。触るとふわっと崩れそうなのに、風では飛ばない。その不気味さに、背中がじわっと冷えた。去年までは見たことがなかった光景で、剪定ばさみを持つ手も一瞬止まった。
正直かなり不安だった。せっかく実がつき始めていたのに、これが原因で全部ダメになったらどうしよう、という気持ちが頭から離れなかった。検索するとアオバハゴロモの幼虫という言葉が出てきて、写真もそれっぽい。慌てて指でこすり落とし、「とりあえず取れば大丈夫だろう」と自分に言い聞かせたものの、枝の感触がどこかスカスカしている気がして、嫌な予感は消えなかった。夜になっても、白い塊が脳裏にちらついて眠りが浅かった。
今思えば、当時は『見えているもの』だけで判断していた。白いフワフワ=表面の汚れや虫、という短絡的な考えだった。後から知ったが、あれはチュウゴクアミガサハゴロモの産卵痕で、枝の内部、形成層や導管近くまで達していることもあるらしい。外から見える綿毛だけ取っても意味がなく、枝そのものがダメージを受けている可能性が高い。当時はそんな発想がまったくなく、「動かないし虫じゃないかも?」と軽く考えてしまっていた。
振り返ると、白い塊を見つけた時点で、枝ごと切るという選択肢をもっと真剣に考えるべきだった。実が惜しい、切るのが怖い、その迷いが判断を鈍らせた。結果的に、その枝は夏前にじわじわと弱り、気づいたときには葉色も悪くなっていた。早めに剪定していれば、被害はもっと小さく済んだのかもしれない。今は、怪しいものを見たら『中で何が起きているか』を疑うようにしている。
あの白いフワフワは、今でも忘れられない。庭で見つけた小さな異変を、軽く流してしまった自分への戒めだ。園芸は、見えないところで進んでいることの方が多い。あの時の違和感を、ちゃんと信じればよかった。そう思うことが、たまにある。
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